鳥類から人間に感染するオウム病で妊婦が死亡する日本初の事例が発生~オウム病の症状・予防・治療
2017年4月9日に産経新聞のニュースで、鳥類から感染する「オウム病」で日本の妊婦が死亡するという国内初の事例があったと報じられました。
Yahooニュースでも大きく取り上げられ、カテゴリのランキングで1位になるなど、一般の人々の関心を集めたニュースでした。ただ、このニュースで、鳥に対する誤解・偏見が生まれないために、インコ生活でも「オウム病」について紹介・解説したいと思います。
先に結論だけ言えば、この病気は、鳥のフンが主な感染経路のため、鳥と普段接していない人が感染する可能性は低いです。
※参考文献:「コンパニオンバードの病気百科」
☆2017年4月10日夜追記
続報として、新たにもう一名の妊婦の方がオウム病に感染し、死亡したというニュースがありました。
これで合計2名の妊婦がオウム病で死亡したことになります。厚生労働省は今回の件を受けて、国民への注意喚起を検討しているとのことです。これによって、鳥に対する風当たりが強くなるのではないかと心配です。
オウム病とは?鳥のケース
オウム病は、鳥クラミジア症とも言われる病気で、細菌であるクラミジアの一種(クラミドフィラ シッタシ)によって起こる感染症です。名前からオウムやインコが感染するイメージを抱きやすいですが、鳥類全般が感染します。
感染数
感染する鳥類としては、オウム類、ハト類、七面鳥が多いです。飼い鳥では、オカメインコ、セキセイインコ、鳩の感染事例が多いとされています。飼い鳥での感染率(飼い鳥をオウム病検査した時の検出率)は、10%程度とのことです。住宅地でも見られる鳩(ドバト)の場合は、研究発表によって異なりますが、岐阜大の福士秀人氏による研究発表では、ドバトの感染率は20%程度という調査結果がありました。
症状
オウム病の原因となる、クラミジアを保有していても、発症しないケースもあります。発症した場合、オウム病特有の症状はなく、風邪に似た症状で、鳥の元気と食欲がなくなります。その他に、下痢などの症状が発生します。
検査・治療方法
初めに鳥を飼うタイミングで検査することが大切です。まず、ペットショップなどでお迎え時に、オウム病(CHL)の検査が行われているか確認しましょう。もし、未確認の場合は、動物病院でフンや血液を採取して検査(PCR検査)を行い、陰性(非感染)か、陽性(感染)か確認しましょう。
オウム病を発症した場合は、自然治癒では回復は望めません。クラミジアに対して高い効果を発揮する、テトラサイクリン系・マクロライド系の抗生剤・抗生物質を投与する治療が必要です。
オウム病はどうやって人に感染する?
オウム病は、人獣共通感染症として、鳥から人にも感染します。感染経路・感染源としては、鳥のフンなどを人が触ることで感染します。そのため、鳥と同じ空間にいるだけでは人には感染しませんが、鳥に触れたりすると、糞に間接的に接触し、感染する可能性があります。
ただ、底敷きの新聞紙などに付着した糞が乾燥し、粉末化したものが、鳥の羽ばたきによって空気中に飛沫が散布され、呼吸することで体内に入る恐れがあります。
その他に、口移しなどの濃厚接触、クチバシでの噛みつかれたり、爪の引っ掻きによってできた傷によって感染する可能性もあります。
人へのオウム病の対策・予防方法は?
健常者であれば、仮に感染した鳥と同じ空間で生活していても感染する可能性は低いです。しかし、妊娠中や体調不良などで免疫力が落ちているタイミングでは、感染する可能性があります。その場合のオウム病への対策・予防方法として以下が挙げられます。
- 鳥との接触を控えるようにする
- 飼い鳥を検査し、感染している場合は、動物病院で治療する
- 鳥との濃厚接触を避け、触った後は手洗い・消毒
- 鳥のお世話の際は、マスクを着用する
- ケージの清掃・消毒を欠かさず、飼育環境を清潔に保つ
免疫力が落ちているタイミングでは、1のように鳥との接触を控えることが推奨されます。難しい場合は、以降の2~5を徹底しましょう。
人間がオウム病が発症したら?治療法は?
オウム病の人の症状
高熱、悪寒、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛、関節痛、咳などのインフルエンザに近い症状が突然発症するとのことです。
治療方法
鳥の場合と同様に、抗生物質(抗菌薬)の投与による治療が行われます。テトラサイクリン系やキノロン系、マクロライド系の抗生剤が有効ですが、妊婦や小児の場合、副作用などの影響から、マクロライド系抗生剤の使用が推奨されています。早期に発見できれば、治療で回復するため、致死率は低いです。
人への感染事例はどれくらい?
オウム病の人への感染は、日本では毎年30人程度確認されているということです。飼い鳥の数と、オウム病を保有率(約10%)ということを考えると、オウム病は人間に感染する確率は低い病気であると言えます。
まとめ・終わりに
今回、日本での妊婦の方がオウム病を発症し、死亡する初のケースでした。今回、どういった感染経路だったかニュースからは分かりませんでしたが、日本での感染経路としては、書籍によると、オウム類71%、ハト類12%と、インコやオウムなどの飼い鳥からの感染が過半数を占めています。
そのため、基本的には、鳥を飼っていない人が感染する事例は少ないと思われます。
鳥を飼われている方については、鳥のお世話をした後、手洗い・消毒を徹底しましょう。飼い主自身の感染を防ぐだけでなく、周りの他の人への感染を防ぐことが必要です。
記事の執筆にあたり、参考としたのが、「コンパニオンバードの病気百科」です。こちらは、獣医の人も参考にしている鳥の病気について、「鳥と小動物の病院リトル・バード」の小嶋篤史氏がまとめた一冊です。鳥の様々な病気・中毒の症状から発生原因、治療・予防法まで紹介されています。鳥を飼われている方は、すぐに参照できるよう手元に置いておきたい一冊です。
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