環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」が改訂!愛鳥家が気を付けたい注意点を解説
2018年2月末に、環境省が策定している、ペットの災害対策ガイドラインを改訂しました。熊本地震で明らかになった人とペットの避難における課題を踏まえた、避難指針が変更となりました。ガイドライン改訂の経緯や、ガイドラインの変更点、愛鳥家が気を付けたいポイントを解説します。
ガイドライン改訂の理由
今回の環境省が作成しているペットの災害対策のガイドラインが改訂された理由は、2016年の熊本地震の際に、避難所で混乱・トラブルが起きたためです。
3.11の教訓からペットを伴う避難指針に
それまでのガイドラインでは、2011年の東日本大震災の経験に基づいた避難指針が定められてました。東日本大震災の際は、ペットを持ち込めない避難所も多い状態でした。その結果、飼い主が犬・猫・鳥などと離ればなれになってしまうケースが多数発生しました。
そのため、改訂前のガイドラインでは、避難時はペットと同行避難することが前提でガイドラインが策定されていました。
熊本地震の避難所でのペットに関する問題点が顕在化
熊本地震では、改訂前のガイドラインに従い、ペット飼育者は、飼っている愛鳥・愛犬・愛猫を伴って、避難所に避難しました。しかし、避難所では、ペットの鳴き声やにおいによって他の避難民とのトラブルが発生しました。さらに、支援物資にペット用フードが十分でなかったりといった問題点が起きました。
それらを受け、ペットを飼育している人に向け、災害時にどのように避難行動を取ればよいのか、避難指針となるガイドラインが改訂されました。
ガイドライン名称も変更
今回のガイドライン改訂では、ガイドラインの名称も変更されました。
- 従来版:「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」
- 改訂版:「人とペットの災害対策ガイドライン」
名称変更の目的として、環境省は次のような見解を表明しています。
「災害時の対策は平常時の準備の延長線上にある。災害が起きてどうするではなく、平常時の備え(適正飼養等)が最も重要」
また、本ガイドラインの対象は、ペットだけでなく、ペットを飼育する人間も含んでいるため、ガイドライン名称が変更となりました。
基本的には犬や猫が中心
ガイドラインでは、ペットとして「犬・猫・鳥・小動物」を対象としています。しかし、残念ながら、ガイドラインの内容は、ペットの割合の90%以上を占める犬・猫が中心です。インコやオウム、文鳥・フィンチなどの愛鳥に特化した記述は用意されていません。
犬・猫では、マイクロチップの埋め込み等が推奨されていますが、鳥の場合、マイクロチップの埋め込みはリスクが高く、ほとんど行われていません。その代替となる足環も、日常生活の事故の元となることで付けない、外すことも多いです。また、悪用を防ぐため、足環情報は非公開のため、データベースで一元管理などもされていない状態です。
同行避難と同伴避難の違い
改訂されたガイドラインでは、熊本地震の際にペット飼育者の避難時に混乱の原因となった、同行避難と同伴避難の違いを紹介しています。
- 同行避難:ペットとともに安全な場所まで避難する行為(避難行動)
- 同伴避難:被災者が避難所でペットを飼養管理すること(避難状態)
災害が発生し、避難が必要な場合は、ペットと同行避難は推奨されます。しかし、避難所によっては、連れてきたペットが、自分たちと別の場所で飼育管理されたり、動物救護施設で預かりを受けるケースもあります。避難所ごとに異なるため、飼い主の方は、避難所のペット受け入れ態勢について、確認することが大切です。
行政支援は人中心、ペットは飼い主の自助が基本
今回のガイドラインでは、自治体などの行政機関が災害時に担う役割は、「被災者の救護が第一」と規定されました。そのため、ペットの災害対策は、基本的に飼い主が責任を負うものとされ、行政はその支援を行うという形になっています。
愛鳥家がガイドラインで従うべきポイント
今回改訂された「人とペットの災害対策ガイドライン」は、犬や猫を中心としたものですが、対象としては鳥も含まれています。そこで、インコやオウム、文鳥などの愛鳥の観点で、ガイドラインで気を付けたい5つ注意点を紹介します。
- 日常時(平時)のケージの配置
- 避難に備えフードの備蓄(最低5日、7日分推奨)
- キャリーケースに慣れる経験・訓練
- 呼び鳴きや鳴き声を減らすトレーニング
- 指定避難所の飼育環境の確認
1.日常時(平時)のケージの配置
まず、災害が発生した際に、ペットが被害に遭わないようにすることが大切です。地震などによって、ケージが倒れやすい場所や、落下物が落ちてこない、室内の安全な場所にケージを設置しておきましょう。また、耐震マットなどで補強することも重要です。
2.避難に備えフードの備蓄(最低5日、7日分推奨)
避難生活では、人間用の食事が優先され、ペット用フードの供給が滞る可能性があります。避難生活のストレスで、愛鳥の食欲が低下している状態に、食べ慣れないフードは食べない場合もあります。そのため、普段から食べ慣れたフードを最低5日分、できれば7日分用意しておきましょう。
特に治療中で療養食を食べている場合は、災害時の入手は非常に困難なため、備蓄を必ず心掛けましょう。
3.キャリーケースに慣れる経験・訓練
避難所によっては、日常生活を送るケージはその大きさ・サイズの関係上、受け入れてもらえないこともあります。そのため、コンパクトなキャリーでも生活が送れるよう、愛鳥に慣れてもらう経験や訓練が大切です。
4.呼び鳴きや鳴き声を減らすトレーニング
避難所でのペットと被災者のトラブルの大半は、においと鳴き声によるものです。その点から、愛鳥にとっては、呼び鳴きや鳴き声などが避難所で問題となる可能性が高いです。鳴くことは、鳥の習性のため、完全に無くすことは難しいです。ただ、呼び鳴きを減らす訓練や、おしゃべりの練習によって、鳴き声の頻度を減らすことは可能です。日常生活の中で、避難時の被災者とのトラブルを防ぐトレーニングを意識しましょう。
5.指定避難所の飼育環境の確認
自分が暮らす地域の指定避難所は、ペット受け入れ可能なのか、避難所の注意事項など、事前に確認しておくことが大切です。それによっては、
- 指定外のペット受け入れ可能な避難所に避難する
- 飼い主は避難所で生活し、愛鳥は車の中で飼養する
- ペットシッターや動物救護施設などに愛鳥を一時預ける
などの選択肢も取ることができます。
これらの注意点は、災害が起きた時ではなく、平時にできる対策です。逆に災害が起きてしまえば、殆ど対応することが難しいです。災害に備えた準備が大切を行うことが災害対策として、最も大切です。
愛鳥家向け雑誌「コンパニオンバード No.26」では、「鳥のいるおうちの災害対策」の特集記事が掲載されています。こちらは鳥に特化した災害対策方法なので、非常に参考になる内容です。
鳥のいるおうちの災害対策のレビュー記事はこちら→【書評】コンパニオンバード26号の防災特集のレビュー~災害時に鳥を守るために
まとめ・終わりに
2018年2月末に環境省がペットの災害対策ガイドラインを改訂したことを受け、改訂の経緯や改訂内容、愛鳥家が気を付けたいポイントを解説しました。災害時の「飼い主の責任」と「行政の役割」の明確化が今回の改定の最も大きなポイントです。
ただ、今回改訂された「人とペットの災害対策ガイドライン」は、残念ながら、犬や猫を中心とした記載です。しかし、ガイドラインに書かれた災害対策は、インコや文鳥などにも当てはまるものも多いため、ぜひ一度目を通しておくことをオススメします(2018年3月現在は文章のみ、4月に正式版が発表予定)。
ペットの災害対策は、災害が起きた時ではなく、平常時の準備が最も大切です。注意したいポイントとして紹介しているものは、ケージ設置位置や食事の備蓄、情報収集など普段から実施できるものばかりです。ガイドラインでは、万が一に備えて準備することが、飼い主の責任として求められています。愛鳥家の方も、愛鳥を守るために、しっかり災害時の準備を整えておきましょう。
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