ワシントン条約会議でヨウムの国際取引禁止が可決~日本国内での譲渡や販売に登録が必要に

2016年10月3日鳥ニュース

ワシントン条約会議でヨウムの国際取引禁止決定

2016年9月24日から、南アフリカ共和国のヨハネスブルグで開催されている、ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する法律:CITES)の第17回締約国会議(COP17)で、ヨウムの国際取引禁止の提案が委員会での採決の結果、可決されました。今後は、ヨウムの国際取引は、大きく制限されるだけでなく、国内でブリードされた個体も譲渡や販売に、登録が必要になります

今回のワシントン条約会議のヨウム取引禁止について、経緯や影響についてまとめてみました。

 

ワシントン条約国会議が2016年9月からスタート

ワシントン条約は、絶滅の恐れがある野生動物を、輸出国と輸入国とが協力して国際取引を規制し、生き物の保護を目的として国際条約です。正式名称は、「Convention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora」という英語で、それぞれの頭文字をとり、CITESは『サイテス』と呼ばれます。日本もこの条約に批准しています。

この条約では、絶滅の恐れのある動物を3つのステージで分類し、最も絶滅の可能性が高い種は附属書Ⅰ、次いで可能性が高い種を附属書Ⅱ、附属書Ⅲにそれぞれのリストが掲載されます。いずれのもワシントン条約の保護下におかれますが、最も絶滅が危惧される附属書Ⅰにリストアップされた生き物は、絶滅を防ぐため、著しく取引を制限されるようになります。

ワシントン条約の会議で採決により、今回のヨウムの取引禁止も、附属書Ⅰにリストアップされることを意味します

 

ヨウムの国際取引禁止の採択の経緯

2016年5月にヨウムの生息国のガボンが国際取引禁止を提案し、EUも支持をしたことが発端です。大型インコのヨウムは日本国内でも約30万円近くで取引されています。非常に高額で取引されるため、アフリカ大陸の原産国では、乱獲や密猟が相次ぎ、生息数が激減していました。生息国の1つであるガーナでは、1992年以降、90~99%ものヨウムが姿を消したという英国の鳥類学専門誌の発表もありました。

 

ワシントン会議(サイテス)のヨウム取引禁止の結果

現在、南アフリカで行われているワシントン会議に参加している、野生生物保全論研究会(JWCS)のtwitterによると、ヨウム取引禁止(ヨウムのサイテス附属書Ⅰ類への引き上げ)の採決は、

  • 賛成95
  • 棄権5
  • 反対35

と賛成が2/3を超え、合意となりました。そのため、今までサイテス附属書Ⅱに含まれていた、ヨウムが附属書Ⅰにリストアップされることになりました。

 

今後のヨウムはお迎えはできない!?ヨウムの扱いはについて

今回のサイテスの結果を受け、ヨウムの取引はかなり規制を受けることになります。具体的に言えば、

  • 野生の個体の取引禁止
  • 野生種ではなく、繁殖種として国に登録された登録証をもつ個体のみ取引が可能
  • 国の登録機関へ登録しなくても、今飼っている個体を飼い続けることは可能

そのため、今後ヨウムは、ブリードされた個体で、登録がきちんとされている個体については、お迎えすることが可能です。今、飼われているヨウムは、特に登録をしなくても継続して飼うことができます。しかし、ヨウムは大型インコでその寿命は50年と言われています。その長い期間を、飼い主がいつまでも飼いつづけられる保証はありません。海外赴任などの生活環境の変化や病気などによってやむを得ず、手放さないといけないことがあるかもしれません。そのため、今飼われている人は、登録が面倒だとは思いますが、できるだけ国の登録機関への登録をオススメします。

 

いつからヨウムの取引規制や、登録が発生するか

CITESで採択を受けて、ヨウムを追加した附属書Ⅰは、会議最終日(10月5日)から起算して90日目に効力が生じるようになります。そのため、2017年の1月上旬に取引規制が発生します。それまでは、今までと同じように取引は可能ですが、今回の結果を受けて、価格の高騰などが発生する可能性があります。また、登録も同じ時期に開始となるため、登録が必要な方は準備をはじめましょう。

※2016年10月7日追記
ワシントン条約第17回締約国会議(COP17)終了を受けて、環境省が結果概要についてリリースを発表しています。その中で、ヨウムの附属書Ⅰへの移行は2017年1月2日になるそうです。

 

ヨウムがサイテス附属書Ⅰに登録

今回のワシントン会議の決定で、ヨウムの生息数の減少に歯止めがかかることを期待します。また、これからヨウムをお迎えしたい人は、サイテスの付属書Ⅰへの昇格を受け、飼う責任は今まで以上になります。しっかりとお迎えする前に、絶滅の可能性が高い種を飼っていけるか、しっかり考慮していただきたいです。