9月8日の「ダーウィンが来た」ワカケホンセイインコ特集に賛否両論の声
2019年9月8日(日)の19時半から放送された「ダーウィンが来た!」で、東京で生活するワカケホンセイインコの特集が放送されました。
これまでの他局での放送と異なる報道の捉え方を評価する声がある一方、生態系への影響に対する言及が不十分といった意見がありました。
どのような放送内容だったか、放送が評価されたポイントと、不満の声が上がった点をまとめたいと思います。
ダーウィンが来た!ワカケホンセイインコ特集の概要
- タイトル:第613回「東京に出没!緑のインコ軍団」
- 放送日:2019年9月8日19:30~20:58
- 放送局:NHK総合
- 番組HP:ダーウィンが来た!(NHK)
冒頭にワカケホンセイインコの目撃情報が紹介
ワカケホンセイインコ情報を番組で募集したところ、
- 六本木ヒルズで見た
- 近所の神社に大群で来る
- 都会でいったいどんな生活をしているか調べてほしい
といった情報が多数あったそうです。それを受け、ダーウィンが来たの取材班は2019年2月より取材を開始したそうです。
冒頭、情報提供者、鳥好きの女の子が登場しました。今気になっているのがワカケホンセイインコで、ワカケホンセイインコがよく見られる場所を調査して、その情報を番組に提供していたそうです。
ワカケホンセイインコをよく見かける近くの公園や神社を訪ねたところ、ワカケホンセイインコに出会えました。木の洞に止まる様子が見つかりました。
ワカケホンセイインコの目撃情報として家の庭にやってくるという情報が多かったそうです。その理由としてはエサ台の存在でした。
エサとして用意されたひまわりの種などを食べにワカケホンセイインコたちがやってくる様子が放送されました。
渋谷区には、屋上の一角に鳥のためにゴハンになるお米を撒いたところ、大量に集まってくるようになったそうです。
しばらくすると、近くの木にワカケホンセイインコが集まってきて、屋上に移ってきました。
そうしている間に、ヒヨドリやスズメがお米を食べにやってきました。少しすると、ワカケホンセイインコが一斉にエサを食べ始めました。
世界各地でワカケホンセイインコの野生化が進行
実はワカケホンセイインコは東京だけでなく、イギリスなどの30か国以上でワカケホンセイインコの野生化が進んでいるそうです。そうした都市でも都会で生息数が増加しています。
元々は、インドやスリランカなどの中央アジアに生息するインコでしたが、ペットとして輸入された個体が、飼いきれなくなったため、空に放たれ、外来種として生息するようになりました。
ワカケホンセイインコの生息地であるスリランカを取材
本来の生息地のスリランカを取材したところ、ワカケホンセイインコの生息地と言われていた草原や林ではいくら探しても見つかりません。
そこで、地元の人にワカケホンセイインコがいる場所を訪ねたところ、田んぼとの回答がありました。
収穫期の田んぼのお米を食べるため、集まってくるそうです。70年前から畑や田んぼで見かけるようになり、人の営みを利用するようになったそうです。
近年ワカケホンセイインコを取り巻く環境が変化している。スリランカも急激な都市化が進み、本来の生息地が減少しているようです。その結果、住処として急激に増えてきているのが都会です。
ワカケホンセイインコは、元々開けた林や草原を好み、木々がまばらに生える都会は、本来の生息環境と似ていました。
さらに、スリランカは仏教の信仰によって、生き物を大切にする文化があり、街のいたるところにエサ台が置かれており、食べ物に困ることがないそうです。
本来は木の洞(ウロ)に巣を作るはずでしたが、都会の建物隙間を巣にするように適応しました。
ワカケホンセイインコの都会で生き抜く秘訣
ワカケホンセイインコが都会で生きる秘訣が紹介されました。
- 慎重さとずうずうしさ
- 群れで行動し、常に安全に気を配る
- 高い学習能力
非常に慎重な性格が都会にマッチした模様です。ヒヨドリなどの他の生き物を観察し、食べて安全なことを確認し、その後行動に移すほどでした。
ねぐらに入るときも、すぐにはねぐらに入らず、電線に止まります。電線の上で、ねぐらに天敵のカラスなどがいないことを確認し、ねぐらに入るほどの安全に気を配っています。
さらに、他の鳥が食べていたものを学習し、自分たちも食べられることを学習しながら、食べられるものを増やしていきました。
ひげじいの質問「東京で増えるのは問題なのでは?」
上記のひげじいの質問に対し、ワカケホンセイインコが外来種であることを
巣を作る巣の場所となる樹木を在来種のムクドリやシジュウカラとの奪い合いになることが挙げられました。
しかし、研究者の報告では、ムクドリやシジュウカラの生息を脅かすまでには至っていないそうです。
みかんやビワなどが食べられた報告はあるが、農業被害には至っていないとのことでした。
ただ、今後個体数が増え、新たな食べ物を学び、農業被害が発生するかもしれないため、注意深く見ていく必要があると言います。
ナレーションの回答に対し、今回のひげじいのダジャレは「インコげん(いい加減)にしなさい」でした。
ワカケホンセイインコの子育てに密着取材
春はワカケホンセイインコの恋の季節とのことで、オスがメスを毛づくろいするなど仲の良い夫婦である様子が紹介されます。
東京では木の洞(うろ)を巣にすることが多いのですが、映像で紹介されたワカケホンセイインコのペアが見つけた巣穴には、すでに別のワカケホンセイインコのペアがいました。
ヒナが育つまでおよそ50日かかるそうです。あまり見かけない野生のワカケホンセイインコのヒナの映像も流れました。
杉並区の妙法寺では複数のワカケホンセイインコが子育てを行っており、集団で子育てを行っているそうです。
オスたちが食べ物を探しに行き、その間メスたちがヒナの世話をします。
そんな中、夜になるとオスたちは巣穴から一斉に姿を消すという謎の行動が明らかになりました。
夜に消えるオスたちはどこに行くのか、日本野鳥保護連盟の松永さんと一緒に捜索を行ったところ、元々いたねぐらがある竹林に戻っていることが明らかになりました。
ヒナやメスがいる巣穴があるのに、7kmも離れたねぐらに戻る理由として、「情報交換しているのではないか」と松永さんが推測されました。
ねぐらにいるワカケホンセイインコの中で、最初に飛び立つ個体がエサのありかを知っている可能性が高いため、そのあとをついていくそうです。
都会の中に点在する食べ物の情報を共有することで、子育てに必要な食べ物を効率的に探すことができます。
5月下旬になり、ヒナは成長し、巣立ちの時を迎えます。その時、天敵のカラスが巣の近くにいて、ヒナを狙っています。しかし、ワカケホンセイインコの群れでカラスを追い払いました。
そうして危機を経て無事巣立ちを行い、2か月ほど親と一緒に生活するとのことです。
最後は「今後、日本の自然が私たちの生活にどのような影響を及ぼすのか、引き続き見守っていきたいと思います。」というナレーションで締めました。
ワカケホンセイインコを害鳥扱いしない放送に高評価する声
これまでの他の放送局でも、2019年ごろからワカケホンセイインコを放送する番組が増えていました。
しかし、そうした放送では、ワカケホンセイインコの騒音や作物の被害、フン害などを強調する形で取り上げられていました。
いたずらに視聴者の恐怖心をあおる内容が多かった中、ダーウィンが来たでは、きちんとワカケホンセイインコの生態を取材し、どういった生活をしているかに焦点を当てていました。
ワカケホンセイインコを害鳥・悪者扱いしなかった点や、駆除ではなく見守ると言った点が、鳥好きの視聴者に高評価でした。
生態系への影響やエサやりに対する注意が不十分との指摘も
一方、ワカケホンセイインコに対する生態系への影響について放送が不十分との声もありました。
今のところ、ムクドリやシジュウカラなどの在来種の生態を脅かすまでには至っていないとありましたが、これだけ繁殖が進めば、巣の縄張り争いで、それらの種に影響を与えているという意見がありました。
また、色々なご家庭でエサやりのエサ台が置かれていましたが、エサによってワカケホンセイインコが食べ物にありつくことで、勢力拡大につながり、在来種のムクドリやシジュウカラが競争に敗れてしまう可能性があります。
そうした点からもエサ台を設けることが生態系に影響を与えるとの指摘がありました。こうした点に対しては、きちんと注意喚起の注意書きが必要だったのではないかと考えます。
公共の放送であるNHKに求められること
今までの放送と異なり、悪役・害鳥としての捉え方が少なかった点を評価する一方、餌やりに関する注意喚起を行わなかった点や、フン害・騒音についての被害を言及しなかった指摘もありました。
放送は取り上げ方によって、肯定にも否定にも捉えられるため、難しい点でもあります。
しかし、NHKは他局の民放とは異なり公共放送です。公共放送を担うNHKには、中立な報道・バランスが求められると考えます。
そのため、放送のバランスとして、よい点だけでなく、そうした側面も報じることも必要だと考えます。
まとめ・終わりに
2019年9月9日(日)に放送されたダーウィンが来た!の第613回「東京に出没!緑のインコ軍団」の放送内容と、放送に対する意見について紹介しました。
他の取り上げ方と違い、害鳥扱いしなかった点や生態について追及した点に対し高評価でしたが、その反面、生態系に対する影響やエサやりへの注意喚起が不足していたとの意見がありました。
ワカケホンセイインコをきちんと取り扱った放送は素晴らしいですが、NHKは中立な報道を行うべき公共放送です。バランスが取れた放送内容が必要だったと感じました。
※ワカケホンセイインコの野生化問題についてまとめた記事はこちらです↓
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