インコがいる愛鳥家のバルサン(くん煙剤の殺虫剤)使用に注意!使用しないのが安全
虫が増える季節が近づくと、バルサンやアースレッドといったくん煙剤を使用されるご家庭も多いです。
しかし、インコや文鳥などの飼い鳥がいる愛鳥家のお家では、バルサンを焚くのは注意が必要です。
殺虫剤であるバルサンなどのくん煙剤の危険性を解説します。
くん煙剤としておなじみのバルサン
バルサンは、ゴキブリやダニなどを駆除するために用いられるくん煙剤タイプの殺虫剤です。
通常の殺虫剤は対象の害虫にむかって噴射するタイプです。
それに対しくん煙剤タイプの殺虫剤は、室内に殺虫効果のある化学物質を霧状・くん煙として散布します。
部屋全体に殺虫成分を行き届かせ、姿を見つけることができない害虫も駆除できることを謳っています。
くん煙剤タイプの殺虫剤は、いくつかの殺虫剤メーカーから販売されており、バルサン以外にアースレッドやフマキラーがあります。
しかし、その中でもバルサンが有名で、くん煙剤を使用することを「バルサンする」というぐらい日本人の間で浸透しています。
※なお、バルサンは元々中外製薬が製造販売していましたが、それからライオンに譲渡され、現在は「激落ちくん」などでおなじみのレックが販売しています。
ペットがいても使用可能との商品説明やQ&A
くん煙剤タイプの殺虫剤で気になるポイントは「ペットがいる家でも使用可能か?」です。
アース製薬が販売しているアースレッドのよくある質問のQ&Aページでは、ペットがいる家でアースレッドの使用可否を掲載しています。
ペット(犬・猫・ハムスター・ウサギ・小鳥など)や観賞魚は部屋の外に出して、十分に換気したのち室内にもどしてください。
特に観賞魚には毒性が強いので、ご注意ください。
ペットの種類には小鳥が含まれているため、インコや文鳥などの飼い鳥でも利用可能とのことです。
くん煙剤を焚いている間は部屋から出し、十分換気したのちに戻すよう注意書きがあります。
類似商品であるバルサンの商品ページ(現在メンテナンス中)では、かつて30分程度換気と紹介されていました。
バルサン後に小鳥を戻すタイミングは長い方がよい
しかし、2019年にTwitter上で、ペットのいるお家ではバルサンに対する注意喚起が拡散されました。
【拡散希望】
ペット飼育者の皆様へ。
隣の住人のバルサンが原因で爬虫類が死んでしまった件ですが、バルサンのd・d-T-シフェノトリン メトキサジアゾン フェネトリン
複合的な神経毒として
爬虫類・鳥類・両生類・魚類・植物にも致死的に作用します!知る事で彼らの命を守ってあげてください
— CyberIguana👾 (@CyberIguana) July 1, 2019
公式HPの情報(ペットは30分以上換気後に戻す)に対し、いいちインコの飼い主さんから獣医師の方の見解も紹介されました。
バルサン…公式HPには、30分以上十分に換気してからペットを戻して……って書いてあるけど、ワシが獣医さんに相談した時は「万全を期すなら、1週間ぐらい知人に預かって貰うぐらいの気持ちでいた方が良いです。もしくは、虫と共存しても大丈夫ですよ。良質なタンパク質なので。」って言われました。 pic.twitter.com/RNpSZHKRSc
— いいちこインコの飼い主@花沢りん吉 (@iichiko_hana) July 1, 2019
化学成分の残留度合いというのは、人間の目や鼻では検知できません。
そのため、商品ページの注意書き以上にしっかり換気したほうがよく、さらに言えば、そもそもバルサンなどくん煙剤を使用しない方が安全です。
バルサンなどのくん煙剤の有毒性のある化学物質
バルサンの成分情報をチェックすると、殺虫作用のある有効成分として、以下の2種類が書かれています。
- メトキサジアゾン(オキサジアゾール)
- フェノトリン(ピレスロイド)
オキサジアゾールとピレスロイドの2種類の化学成分によって、ゴキブリやダニといった室内に発生する害虫に作用します。
これらの化学物質は選択的毒性を持つと言われており、昆虫などに対しては強い毒性となるものの、人間などの哺乳類や鳥類などの恒温動物への毒性は小さいと説明されています。
しかし、選択的毒性といっても、毒性がないわけではありません。
先程SNSで話題になったツイートでも鳥類への毒性があるとの問い合わせ結果が紹介されています。
追記、リプ欄の方へ
鳥類と植物に関しまして、お問い合わせの結果・鳥類に関しては肝臓で代謝ができずに毒になる
致死量等は実験をしていないので不明・バルサンで植物が枯れる場合があるのは事実
詳しくは検証実験をしていないが、実際枯れる全体注意としては間違いではないとの事です
— CyberIguana👾 (@CyberIguana) July 2, 2019
そのため、飼い鳥を避難させた状態でバルサンを焚いても、有毒成分が残っていると、戻した際にインコなどの飼い鳥にダメージを与えることになります。
別の部屋でもバルサンの有毒成分が届くことも
可愛らしい鳥のイラストでおなじみのBIRDSTORYさんのウェブサイトには、「本当にあった怖い話」という記事が掲載されています。
愛鳥家を対象にした身の回りの危険について紹介する中で、バルサンについても言及されています。
本当にあった話として、鳥がいる部屋から遠く離れた部屋でバルサンを焚いたところ残念な結果になってしまいました。
同じ家屋内では隔離できていると思っていても通気孔でつながっていたりします。
そうした点で鳥がいない部屋だからといって同じ屋内でバルサンを焚くことは死亡事故の危険性が高いです。
集合住宅の別の階で焚かれたバルサンでの死亡事故も
インコではありませんが、2019年にTwitterでペットとして飼育している爬虫類が突然死亡したという報告のツイートが話題になりました。
最初は死亡した理由については判明していませんでしたが、その後、同じマンションの上の階でバルサンが焚かれたことがわかりました。
2匹の爬虫類が亡くなる前に、エサとして育てていた虫が死亡したこともあり、バルサンが原因であると特定されました。
このように集合住宅などでは家が隣接しているため、自分たちだけでなく近隣の方がバルサンを焚かないかにも注意が必要です。
また、一軒家タイプであっても、隣の家でバルサンが焚かれると、風向きによっては、室内に殺虫成分が入り込んでくることがあります。
愛鳥家の家ではバルサン不使用が安心・安全
ここまでの紹介で、バルサンを使用しても一定期間隔離できれば、命を落とす可能性は低くなります。
しかし、バルサンの化学成分は人間の目には見えず、どれだけ室内に残っているかもわかりません。
人間(60kg)と鳥(50gと仮定)を比較すると、重量的には1000倍以上の差があります。
人間であれば、問題ない毒性の量であっても、身体の小さなインコでは影響を与えかねません。
そのため、愛鳥家の方は万が一の事故を防ぐため、バルサンを使用しないことが推奨されます。
※バルサンの対象となる害虫が鳥を襲うことはありません。
(追記)横浜小鳥の病院・海老沢先生が中毒症状に言及
鳥専門病院としてもっとも有名な横浜小鳥の病院、海老沢和荘先生も、殺虫スプレーやくん煙剤に含まれるピレスロイドについて言及しています。
しかし実際には殺虫スプレーやくん煙剤で鳥に中毒症状を起こすことがあります。鳥のいる空間のみならず、近くの部屋でも使わないようにしょう。
— 海老沢和荘 (@kazuebisawa) August 12, 2021
ピレスロイドに選択毒性はないものの、実際にはバルサンなどのくん煙剤でインコや文鳥などの飼い鳥が中毒症状を起こすことがあると注意喚起されています。
横浜小鳥の病院の虫対策は侵入防止用に網戸のみで、実際に虫が院内に入った場合は物理排除する対応をしているとのことでした。
バルサン商品ページは長期メンテナンスで非表示
なお、くん煙剤タイプとして最も知名度の高いバルサンですが、現在、商品ページがメンテナンス中となっています。
このバルサンの商品ページがメンテナンス中になっていたのは2021年6月時点で確認しており、2ヶ月以上に渡って、商品詳細情報がない状態です。
ただ、第二類医薬品であるバルサンについて、ネット上で商品情報や注意情報を得ることができないのは、あまり好ましい状況とは言えません。
(2022年4月追記)バルサンHP復活も鳥類への言及なし
2022年4月に確認したところ、バルサンのHPがメンテナンス終了しており、各種商品説明やQ&Aページが用意されていました。
そこで、Q&Aページでペットに関する質問とメーカー回答をチェックしてみました。
動物に関する質問は3つありましたが、基本的なペットの対象は、犬やネコといった哺乳類でした。
3つ目の質問は魚類に関する回答に、爬虫類や両生類についての記述がありましたが、インコなどの鳥類への影響の記述はありませんでした。
そのため、やはりこのQ&Aページを見る限り、飼い鳥への影響が言及されていないことから、愛鳥家の方は使わないほうが安全です。
まとめ・終わりに
今回、バルサンでおなじみくん煙剤タイプの殺虫剤の愛鳥への危険性を紹介しました。
バルサンやアースレッドに含まれる化学成分は、選択的毒性を持ち、虫には強い毒性があるものの、哺乳類や鳥類への毒性は低いと言われています。
しかし、バルサンを別の部屋で焚いたり、集合住宅の異なる階で焚いても、小鳥や爬虫類の死亡事故が起きています。
そのため、バルサンを焚く場合は絶対に隔離を忘れてはいけません。
散布後に十分換気すればOKとメーカーHPにあるものの、インコや文鳥などの小鳥への影響を考えるとそもそも使用しないことが絶対的に安全です。
愛鳥と少しでも長く一緒に暮らせるよう、こうしたくん煙剤タイプの殺虫剤の使用するかどうか熟慮する必要があります。
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