【鳥ニュース】賢いインコがモテるという研究結果が東京新聞に掲載!実験の詳細を解説
2019年1月11日の東京新聞朝刊に、『インコ「賢い」雄がもてる 中国などのチーム発表』という記事が掲載されました。群れの中での異性をめぐる競争に賢さが影響する可能性があるとのことです。ただ、日本で報じられたニュースには具体的な実験の内容について、不足している部分があったので、元の英語版記事からの実験条件や研究結果を含め紹介したいと思います。
ニュースの概要
2019年1月11日付けの東京新聞朝刊の40ページ目に掲載された記事によると、
セキセイインコの世界では、課題を解決できる「賢い」雄がもてる。実験を基にしたそんな研究結果を、中国などのチームが11日付米科学誌サイエンスに発表した。訓練を重ね、複雑な容器を開けて餌を食べる姿をみせると、以前はそっぽ向いていた雌から気に入られるようになったという。
雌のセキセイインコは子育て期の餌を雄に頼るため、知的な振る舞いで餌を手に入れる姿が魅力的に映るのではないかとチームは推測している。
賢さではなく、食べ物につられた?
今回のニュースを受けて、SNS上でも多くのコメント・感想が投稿されています。その中で、「インコのメスはオスの賢さよりも食べ物につられたのでは?」という意見をいくつか目にしました。
たぶんご飯につられてるw https://t.co/qfYyCYyL3p
— 内村かなめ@あけおめ! (@UtimuraKaname) 2019年1月11日
餌付けされてるだけで草
— $ibaちゃん_:(´ཀ`」 ∠):(パンジャンドラム仕様) (@fllot8508) 2019年1月12日
これ、ひるおび! で
八代弁護士が言っていたが
「訓練しなかったインコの方が『賢い』かも知れない。『エサをくれるオスがモテる』の当たり前の事」
確かに…。
物事の現象と本質,原因を
いつも見極める様に注意していないといけないなぁ。 https://t.co/gdRvuranCl— Mark (@greenfieldlane) 2019年1月11日
賢い雄のインコがモテるの元の英語記事を参照
ニュースの元記事(英語版)は、「Problem-Solving Budgies Make More Attractive Mates」というタイトルでフォーブスに掲載されていました。(こちら)
英語記事では日本版の見出しに登場した「賢い」を意味するsmartやintelligentではなく、「問題解決」という意味のProblem-Solvingという表現が使われていました。実際にサイエンス誌に掲載された論文のタイトルも、問題解決という表現でした。
日本語の記事に訳される際には「賢い」にフォーカスされていますが、英語版を読むかぎり、エサを取り出すという「課題解決」が主眼の研究内容でした。
セキセイインコの実験の条件
ただ、研究結果を報じたニュースの元記事(英語版)を読み進めると、単純な実験ではないことが分かりました。
参加したセキセイインコの数
- 34羽のオスと17羽のメスのセキセイインコが実験に参加
- オス18羽とメス9羽のグループ①と、オス16羽とメス8羽のグループ②に分割
- ①は課題解決の実験のためのグループ、②は比較対照実験用のグループ
このようにオスの課題解決が、メスの好みに影響を与えるのか判断するために、比較対照実験の形を取っています。
セキセイインコの課題解決の実験結果
比較対照実験の内容と結果(グループ②)
- オス2羽とメス1羽が選ばれ、3羽の状態で一緒に同じ空間で過ごします(合計8組)。
- メスが2羽のオスのうち、より長い時間一緒に過ごしたオスを好かれているオスと判定します。
- もう一度、同じオス2羽と同じメスが一緒に過ごした場合に、どちらのオスを選ぶか調べます。
比較対照実験の結果、好かれているオスは、2回目も同じようにメスに選ばれました。8組ともメスの好みは1回目と2回目で変化しないことが分かりました。
課題解決の実験の内容と結果(グループ①)
- オス2羽とメス1羽が選ばれ、3羽の状態で一緒に同じ空間で過ごします(合計9組)。
- メスが2羽のオスのうち、より長い時間一緒に過ごしたオスを好かれているオスと判定します。
- 好かれなかったもう一方のオスに、下図の2種類の容器を開けられるトレーニングを行います。(メスが見えないところで)
- ケージで区切られた状態で、好かれなかったオスが容器を開け、食べ物を食べるところをメスに見せます。
- 同様の状態で、好かれていたオスが容器を開けられないところをメスに見せます。
- もう一度、同じオス2羽と同じメスが一緒に過ごした場合に、どちらのオスを選ぶか調べます。
課題解決の実験では、比較対象実験とは異なり、1回目は好かれていなかったオスが、2回目はメスから好かれるようになりました。これは9組中9組とも同様の結果でした。
性別や食べ物の影響を検証する実験
さらに、性別による影響も調査する実験も行われました。オス2羽をメス2羽に置き換えて、同様の実験を行ったところ、好みのメスは1回目と2回目で変わりませんでした。そのため、性別による影響はないことが実験によって明らかになりました。また、食べ物が影響しているかという点についても、対照実験によって食べ物が好みに影響を与えていないことを発見しました。
食べ物を獲得する行為にメスに好かれる要因に
今回の実験では、オスが食べ物を獲得する姿をメスが目撃することで、好みが変わりました。そのため、オスが食べ物を与えてくれるから、メスがそのオスを好むのではなく、課題解決力がメスに好かれる要因の一つである可能性を示唆しました。
まとめ・終わりに
今回、2019年1月11日にニュースで報じられた「賢いセキセイインコのオスがメスにモテる」という研究結果について紹介しました。日本語に訳されたニュースの内容では要約され、実験の詳細が省略されていました。
英語版の記事を確認したところ、きちんと比較対照実験が行われ、食べ物や性別の影響を受けておらず、課題解決するオスの姿がメスの好みに影響を与えることを示した論文でした。さらに課題解決力が進化の過程に影響している可能性を示唆するという点まで言及しています。
まだまだこうしたインコの分からない点はたくさんあります。こうした生物の謎についてますます研究が進むことを望みます。
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