インコフェスタ2019の参加レポート!専門家による野生インコの撮影や生態を講演
2019年3月9日に東京・新宿で開催されたインコフェスタ2019に参加してきました。イベントでは、世界で野鳥や野生のインコを撮影している4名の専門家が登壇され、野生のインコの写真や生態、撮影秘話など紹介されました。どのような内容だったか、レポートを紹介したいと思います。
会場には100人近くの参加者が
インコフェスタ2019は、野生のインコがどんな顔をしているのか?どんな環境で暮らしているのか。実際に現地で写真を撮影されている方に、その生態をおさめた写真を見ながら解説してもらうイベントです。
インコフェスタが開催された会場内には多くの来場者が訪れ、大半の席が埋まっている状態でした。
講演だけでなく、会場後部には、野鳥やインコに関するグッズの物販コーナーもありました。さらに、講演者が執筆された書籍や、写真集・DVDなども販売されていました。
野生のインコってどんな暮らしをしている?(松村伸夫さん)
最初の講演は、今回のインコフェスタ2019の主催者でもある、松村伸夫さんです。司会者からは、「ルワンダのつり橋から落ちたことがある。ガイドから死んだと思われたが、無事生還した。」と紹介されました。
職業がバーダーで、趣味で会社員という自己紹介で、会場内で笑いを誘っていました。野鳥撮影歴25年で、昨年も7回海外で撮影を行い、海外渡航歴78回とのことでした。5大陸までは制覇し、あとは南極を残すのみということでした。これまで国内撮影種約500種、海外撮影種約3000種を撮影され、最も撮影に注力しているのは、ヤイロチョウという種類の鳥だそうです。
今回の講演では、松村信夫さんが訪ねてきた海外で撮影した野生のインコが紹介されました。まず紹介されたのはズグロシロハラインコです。野生のズグロシロハラインコの写真は珍しく、会場の参加者も驚きの声を上げていました。ズグロシロハラインコは派手な羽色ですが、木々に紛れると実はかなり見つけにくいとのことでした。野生下では、ズグロシロハラインコはイチジクの仲間の実を食べているそうです。
続いて東南アジアに生息する、ベニインコやダルマインコ、コオオハナインコモドキ、タイハクオウムなどが紹介されました。撮影秘話として、東南アジアの撮影では、ヒルにすごく襲われるとのことでした。
オーストラリアの野生のインコでは、シドニーのロイヤル国立公園でキバタンやアカビタイムジオウムなどが日本のハト同様に暮らしているとのことでした。
南米のインコでは、インコでも人気が高まっているマメルリハの写真が紹介されました。参加者もマメルリハを飼育されている愛鳥家が多く、スマホでスライドを撮影されていました。
マメルリハはインコの中でも大きさが最小と言われていますが、すごく小さく、羽の色も緑色なのでとても見つけにくく、望遠レンズを使っても、かなり小さくしか撮影が難しいとのことでした。
さらに、アフリカのインコとして、こちらも飼い鳥として人気のコザクラインコの写真が紹介されました。
コザクラインコが、現地のスズメの仲間の鳥と過ごしていたそうです。
また、松村さんは南米でもテント生活で撮影を行い、自分トイレを設置したり、バケツを使ってシャワーを浴びていたとのことで、撮影のために過酷な環境に身を置いていました。
コンゴウインコと中南米のインコ(長野敦さん)
長野敦さんは、ペンギンが好きでペンギンの写真集を出版されています。ペンギンを撮影するため、南極の周りにある亜南極と呼ばれる地域にもたびたび訪ね、一度ペンギンに取り囲まれたこともあるそうです。
長野さんの講演では、中南米のインコということで、以下の3つの地域で撮影したインコが紹介されました。
- コスタリカ
- ブラジル・パンタナル
- ブラジル・アトランティックフォレスト
コスタリカでは、日本でも見かけるコンゴウインコについて紹介がありました。コンゴウインコは鳴き声が大きいため、遠くからでも見つけられるそうです。コスタリカで印象深いのは、(アカ)コンゴウインコとヒワコンゴウインコの2種とのことです。
その他に日本ではあまり見かけないアカミミインコなどの珍しいインコの紹介もありました。
南アメリカ大陸の中央部にあるブラジル・パンタナルは、世界最大級の湿地帯で、国立公園が一帯に広がっています。パンタナルはブラジル人からも、「動物を見るならパンタナルに行け」と言われるほど現地でも有名だそうです。
パンタナルで見られるインコとして、スミレコンゴウインコが紹介されました。
スミレコンゴウインコは世界一高価なインコの1つと言われています。そうしたスミレコンゴウインコもパンタナルで目撃できるそうです。
その他にもインコで唯一自分で巣をつくるオキナインコの巣の写真もスクリーンに映されました。
1つの巣で複数のつがいが生活しています。さらにオキナインコはクロカミインコなどの他の種類とも一緒に行動しているところを撮影されたそうです。
ブラジルの東側にはアトランティックフォレストと呼ばれる海岸沿いの森が広がっています。2000m級の山もあり、高山帯の気候もあって、場所によって雰囲気が大きく異なるそうです。
アトランティックフォレストはアマゾンに匹敵する多様性で、植物の種類は2万種程度生息し、ここにしか生息しない固有の種も多く、多くのバーダーが訪ねるそうです。
そんなアトランティックフォレストで見られるインコについて紹介があり、ウロコメキシコインコのような馴染みのあるインコから、珍しいインコまで撮影写真が紹介されました。
こちらはハシブトルシハシインコと呼ばれるインコです。アトランティックフォレストの森も開発が進み、市街地化していますが、そうしたところで暮らすようになっているそうです。
最後に長野敦さんは、「中南米のインコ=派手な大型のコンゴウインコのイメージが強い
が、実は緑色の羽の色の小さなインコも多い。」との言葉で締められました。
野生のオカメインコとセキセイインコ(岡本勇太さん)
野生のオカメインコ・セキセイインコを撮影されている岡本勇太さんは、オーストラリアでゲイの人に誘われたことがあると紹介がありました。
岡本勇太さんは高校生の頃にオカメインコを飼い始めたことをきっかけに野生のオカメインコに興味を持ったそうです。その後、オーストラリアに何度も渡り、野生のオカメインコやセキセイインコを撮影してきました。そうした撮影の成果をまとめた、「インコのびのび」を出版されました。
今回のトークショーでは、どのように野生のセキセイインコを発見するか、探し方や生息ポイントについて紹介されました。さらに、野生のセキセイインコとオカメインコの飛び方がどのように異なるかなども写真を交え、説明がありました。岡本勇太さんとって、オカメインコとセキセイインコは以下のような存在だそうです。
- オカメインコ:「世界一かわいい鳥」
- セキセイインコ:「世界一かっこいい鳥」
また、2019年1月にオーストラリアを訪ねた際に遭遇した15万羽を超えるセキセイインコに遭遇したエピソードが披露されました。まるで嵐が起きているようなセキセイインコの大群が飛び交う動画には、多くの参加者から驚きの声が上がりました。
そんな岡本勇太さんですが、このたびこれまでの撮影した野生のインコの動画をまとめたDVD「Kingdom of Parrot~オーストラリアのオウム・インコたち」を制作されました。
インコフェスタ2019の会場にて先行販売され、購入者には直筆サインがいただけました。
野生のインコを見に行こう(松井淳さん)
最後の登壇者は松井淳さんです。松井さんはこれまでの野鳥撮影家とは少し異なり、オーストラリアのケアンズでバードウォッチングツアーを行う会社「シックルビルサファリ」に勤められています。
オーストラリアで見ることができる野鳥について、インコ・オウムを中心に、たくさんの種類の紹介されました。
日本ではカラフルな羽の色で人気のゴシキセイガイインコも町中にいて、写真のように群がっているそうです。
普段これだけの集団で見かけることはないので、参加者からは驚きの声が上がっていました。
さらに、キバタンなども、群れで飛び立つ姿など普段目にすることができない光景がオーストラリアでは見ることができると写真が紹介されました。
オオハナインコやヤシオウム、ミカヅキインコなど日本の愛鳥家によく知られているインコ・オウムが多数紹介されました。
その他にも、日本の愛鳥家にはあまり馴染みのないインコについても紹介がありました。
こちらはアカガオインコと呼ばれるインコで、オーストラリアでは珍しい2種類しかいない、木に穴を掘るインコだそうです。こちらは日本のペットショップや専門ショップでも珍しい種類の鳥です。
好きなインコを野生下で見たい場合に、松井さんのようなガイドをお願いすることで、効率的に探鳥ができるとのことでした。
ぜひ、ケアンズ周辺に旅行の際は、松井淳さんのガイドを検討するのがオススメです。
最後にトークショー形式で参加者から質問受付
4名のスピーカーの講演が終了後、インコフェスタ2019の参加者から質問を受け付けて話す、トークショーが行われました。
参加者からは、以下のような質問がありました。
「マメルリハは何を食べているか突き止められたか?」
→突き止められなかった。シードを食べているのを目撃した。ガイドによると、地面に降りて食べている様子を見かけたことがある。
「何十万羽という数の鳥をどのように数えているのか?」
→まず鳥を千羽数える。その千羽の鳥のサイズがいくつあるか数えることで何万羽いるか確認する。
「南米に暮らすサザナミインコを撮影したことはあるか?」
→松村さん、長野さんともになし。基本的にバードウォッチングは現地ガイドに案内してもらうが、リクエストしなければ、生息地に連れていってもらえない。サザナミインコはリクエストしたことがなかった。ツアー担当の松井さんも、リクエストがなければ、バーダー向けの鳥の生息地を案内するそう。
「写真をうまく撮影する方法は何か?普段どれぐらい撮影されているか?」
→家の中だとISO感度を上げる。多い日は7,8000枚。長野さんなどはヤイロチョウを待っている間は1枚も撮影しないことも。
「野生のセキセイインコでは障害を持った子が生まれる確率や生まれることがあるのか、そうなった場合は?」
→障害を持った子は生き延びるのが難しい。セキセイインコやオカメインコは放浪する性質があり、障害を持った鳥は取り残される可能性が高い。野鳥の場合は、独り立ちして翌年には多数が落鳥する。特に猛禽類は半数近くが落鳥する。
まとめ・終わりに
今回、2019年3月9日に開催されたインコフェスタ2019の講演内容について紹介しました。どのスピーカーの方のお話も、野生のインコたちの実物を目にされていて、とても興味深い内容でした。日本では珍しい種類のインコも世界中にはまだまだたくさんいるのだと感じました。
インコフェスタ2019の講演者の方は、愛鳥家よりもバーダー(野鳥家)に近いので、2つのグループの考え方の違いも知ることができて、勉強になったイベントでした。
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