愛鳥祭2019セミナー「健康診断へ行こう!検査は何をやるの?」講演メモ(バーズ動物病院・西谷英氏)
愛鳥祭2019の2日目(6/2)に行われたバーズ動物病院院長・西谷英先生の講演内を記録したメモを紹介します。非常に勉強になるセミナーだったことに加え、メモを整理したので、参加できなかった人向けに紹介します。
※すべての講演内容を正確には記録できていませんが、ご了承ください。
「健康診断へ行こう!検査は何をやるの?」講演メモ
- 講演イベント:第4回愛鳥祭
- 日時:2019年6月2日14:30~15:00
- 場所:東京都立産業貿易センター台東館
- 講師:西谷英氏(バーズ動物病院院長)
- 講演タイトル:健康診断へ行こう!検査は何をやるの?
健康診断での通院は「いつもの飼育ケージVS移動用ケース」
健康診断のためにはインコなどの飼い鳥を動物病院に連れてくる必要があります。普段の飼育ケージでそのまま連れてくるか、移動用のキャリーケースに入れて来院することになります。それぞれのメリットを紹介されました。
プラスチックケースのメリット
- 狭いかごがつかまえやすい
- 大きなケージで鳥を捕まえるのは大変、穂定時に無駄なストレスを与えなくて済む
- 移動中はプラスチックケースが安全
普段使用している飼育ケージ
- 飼育の様子が分かりやすい
- 飼育の改善点を見つけやすい
- スマホで普段のケージの様子を撮影して比較できる
ただ、様々なタイプの移動用ケージがありますが、慣れないケージに入れられるのはすごいストレスになります。また、網でない方が安全です。
健康診断を受ける際、事前に伝えてほしいこと
- 性格:人を嚙む・手が苦手など
- 病気:発作、けいれんや治療中の病気の有無
- 現在の状態:今愛鳥がどういった状態か
健康診断の種類
健康診断で実施する項目は主に4種類あると紹介されました。
- 問診
- 視診
- 触診
- 検査
1~3の問診・視診・触診では愛鳥の顔・体・足の以下の部位をチェックします。
- 顔:目、鼻、耳、クチバシ、口腔内、羽
- 体:首、胸、腹、背中、翼
- 足:皮膚、爪、脚力、握力、足底
その検査必要ですか?メリット・デメリットを見て、検査を選択する
健康診断で行う検査には、以下の6種類があるそうです。
- 糞便検査
- そのう液検査
- レントゲン検査
- 超音波検査
- 血液検査
- 病原体検査
①糞便検査
鳥のフンは3つに分類することができます。
- 茶色・緑色のもの:便
- 白色:尿酸
- 透明:尿
便は消化器、尿・尿酸は泌尿器で作られますが、最終的に総排泄から一緒に排出されます。
侵襲(生体を傷つける処置)に弱い鳥にとって糞便検査のような非侵襲性検査は重要です。糞便検査では、まずは便の様子を肉眼で確認します。
- 見た目でわかる便の異常:血便、金属中毒、分泌不全など
- 見た目でわかる尿酸の異常:金属中毒(緑色など)OR溶血、クラミジア感染症
よく観察した後は顕微鏡で観察します。ここは費用が掛かってくるが、そんなに費用は掛からない(バーズ動物病院では300円)のでやっておいたほうがいいです。顕微鏡では寄生虫、細菌、真菌、消化(デンプン・脂肪の様子)について確認します。
「先生、うちの子、下痢しています。」
→「それ本当に下痢ですか?」
多尿と下痢を区別。多尿は泌尿器の異常であり、下痢は消化器の異常です。
下痢として来院した鳥のほとんどが多尿のケースであることが多いです。水分が多くても便の形が崩れていなければ、下痢ではありません。
多尿の原因は様々。
②そのう液検査
そのう液検査は海外ではあまり実施されることはなく、日本でも実施されないです。
「そのう検査ができる=鳥を診れる?」
検査によりそのうを損傷する危険性もあるため、検査には注意が必要です。ゾンデというチューブを使ってそのうを検査します。そのうにいる病気の原因となる寄生虫や細菌・真菌などを調査します。
- 寄生虫:トリコモナス
- 細菌:らせん菌
- 真菌:カンジダ、菌糸
③レントゲン検査
リスクは比較的少なく、リターンの多い検査です。
気嚢領域が大きいため、内臓の輪郭が明瞭にレントゲン写真に写ります。ただしノーリスクではないです。
骨折や死亡の可能性もあります。状態の悪い鳥では実施しません。呼吸の悪い子は要注意です。
レントゲンの種類には、CR,DR,フィルムと種類があります。
④超音波検査
エコー検査、インコなどの小型鳥では有効性の範囲が狭い、液貯瑠などを調べます。腹水か嚢胞か判別できます。
レントゲンで写らない卵を見つける役割もあります。(薄い殻の卵はレントゲンで写りにくいため)
⑤血液検査
リスクが高い検査です。全血球検査、生化学検査に分類されます。鳥の血球は壊れやすいので取り扱いに注意です。
採血部位は頸静脈か、爪の2パターンがあります。
頸静脈のリスク・デメリット
- 100%の安全を保障できない(鳥に針を刺すと死んでしまうは迷信)
- 保定のリスク
- 出血が止まらないリスク(血が止まらない病気を持っている場合)
- 血圧低下によるリスク
頸静脈のメリット
- 超小型鳥でも可能(少ない血液量でOK)
- 検査結果にアーティファクトが生じない
- すばやく採血できる(爪切りと比較して)
- 疼痛が少ない
注意点:出血による血種や失血死が起きうる、心肺への不安
爪切りのデメリット
- アーティファクトが生じる
- 保定時間がながくなる
- 血液が少量しか取れないことが多い
- 疼痛が伴う
爪切りのメリット
- 出血による死亡事故は皆無
→意外と爪切りのデメリットが大きいです。
⑥病原体検査
遺伝子検査が一般的。検査材料に含まれる遺伝子を検出するが、検出感度、特異性ともにに高く、優秀な検査です。
- メリット:死滅した病原体も検出できる(デメリットになることも)
- デメリット:遺伝子変異した病原体は検知できなくなる
検査センターの選択が大切です。なぜならば、検査機関によって、検査条件が異なり、病原体の種類、感度、特異性に違いが出るためです。
現状では、国際的に共通した検査法は定められていません。そのため、信頼できる検査機関を利用します(ex. 検査実績、検査データの開示を行っている機関など)。
基本的に検査会社を決めるのは病院(獣医師)です。ただ飼い主から希望を伝えれば対応してくれます。
ほとんどの鳥の病院は、CBL(Companion Bird Laboratories)を使っています。
※CBLは小鳥の病院BIRD HOUSE(眞田 靖幸獣医師)の検査部門です。
病気によって、検査材料の違いが生じます。受けるべき検査はクラミジア感染症の診断などです。受けた方がよい理由はクラミジアは人に感染するためです。
検査材料の選択は、目的を考慮する
検査結果の解釈:陰性の場合
陰性だとしてもその病気にかかっているとは言い切れません。
陰性結果とは検査材料の中に目的とする病原体の遺伝子が存在していなかったということであり、疾病を否定するものではないからです。
採材時期、検査材料の種類または採材方法が適切でない場合、本来は陽性であっても陰性結果となることがあります。
感染や疾病などの健康診断の最終的な判断は獣医師が下します。
検査のまとめ
6つの検査について西原先生の実施すべきオススメ頻度を紹介されました。
- 糞便検査 外来の時は毎回するのがオススメです
- そのう液検査 半年に1回くらいはしておきましょう
- レントゲン検査 最低でも年に1回くらいはしておきましょう
- 超音波検査 病気が疑われる時におこないましょう
- 血液検査 最低でも年に1回くらいはしておきましょう
- 病原体検査 年に1回くらいはしておきましょう。
参考資料(糞便検査)
東京・世田谷にある鳥と小動物の動物病院「リトルバード」の小嶋篤史先生が、学校獣医師向けに糞便検査をまとめた資料がありました。
こちらは講演で出てきた糞便検査のポイントについて詳しく紹介されており、愛鳥家にもオススメな資料になっています。ぜひ、ご参考にお読み下さい。
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