【追記】ワカケホンセイインコの野生化問題についてまとめ~東京・神奈川で繁殖
以前より東京都や神奈川県などの関東地方で、目撃情報が相次いでいたワカケホンセイインコですが、最近テレビなどでも取り上げられニュースで見かけることも増えてきました。
そこで、改めて野生化したワカケホンセイインコの問題・経緯についてまとめてみたいと思います。
※2022年1月20日追記 過熱する報道を受け、インコ生活でワカケホンセイインコを調査している研究者にインタビューを実施しました。
ワカケホンセイインコとは?
ワカケホンセイインコは、インドやスリランカに生息していたホンセイインコの1種です。
体長は約40cmと中型サイズに含まれます。長く美しい尾羽が特徴的です。
その他に、見た目の特徴としては、興奮すると点目になる瞳と、首の周りに黒い輪が挙げられます。
なお、首の周りにある黒い輪は、成鳥のオスによく見られ、メスは黒い輪がない個体がほとんどです。
※ワカケホンセイインコにまとめた記事はこちら→【中型インコ】ワカケホンセイインコのデータ・性質・特徴について
ワカケホンセイインコ野生化の歴史
ワカケホンセイインコが日本で野生化した理由は、元々飼い鳥として輸入した個体が逃げ出したことが原因です。
輸入された個体は繁殖個体ではなく、原産地で捕獲した野生の個体でした。
そのため、逃げ出した後も生き延びて日本の環境にも適応し、野生化した歴史があります。
公益財団法人・日本鳥類保護連盟による調査によると、1960年代から野生化が始まったとの記述がありました。
国立環境研究所の侵入動物データベースによると、”1969年から東京都23区の西南部で野生化し,数百羽の規模で棲みついている.”とのことです。
その後、東京以外にも、愛知、京都、広島などで繁殖した記録がありましたが、現在では、関東以外ではほとんど見られないそうです。
1992年に朝日新聞に掲載された記事の情報では、以下のように紹介されていました。
1969年、世田谷区三軒茶屋で、約百羽が鳥獣販売業者のカゴから抜け出したのが発端
ネットに存在する最も古い文献は1995年
ネット上でワカケホンセイインコの野生化について調べてみました。
ネットに掲載されている最も古いワカケホンセイインコの資料は、1995年の東京・大田区環境部が発行した「大田区の自然観察路」でした。
大田区にある洗足池において、ワカケホンセイインコが観察できると記載がありました。
東京工業大(東工大)で群れが目撃
野生のワカケホンセイインコの住処として、東京都目黒区にある東京工業大学(東工大)大岡山キャンパスが有名です。
東工大では、1000羽近くのワカケホンセイインコが目撃されるようになりました。
この中には、ワカケホンセイインコ以外にも、ダルマインコやボウシインコも生息していることが観測されています。
朝日新聞の記事によると、多いときは約1800羽ほど目撃されたとの情報がありました。
しかし、その後、2015年7月ごろから東京工業大学からワカケホンセイインコが姿を消したそうです。
東京工業大学で観察された、ワカケホンセイインコは神奈川県の川崎市などにすみかを移しました。
2018年に頻繁にテレビニュースに登場
ワカケホンセイインコの野生化については、以前からもテレビニュースでも取り上げられてました。
しかし、2018年から頻繁に取り上げられるようになりました。
2018年6月28日に日本テレビが紹介した後、7月2日にフジテレビ、7月17日にテレビ朝日と、各キー局がワカケホンセイインコを取り上げました。
中でも、テレビ朝日のワイドスクランブルでは、番組コメンテーターが、「捕まえて5000円で売ればいい、変わり者が買う」といった、良識を疑うような的はずれなコメントを行いました。
ただ、以前に比べ、上野公園などでの目撃情報も紹介され、目撃ポイントが増えています。
ニュースでの頻度や、発見場所も増えてきています。
そうした意味で、野生のワカケホンセイインコは、都会に適応し、着実に個体数を増やしていることが推測されます。
鳴き声や糞害、生態系破壊の恐れを危惧
テレビなどで取り上げられる際に、ワカケホンセイインコが野生化することの問題点として挙げられるのは主に以下の4種類です。
- 鳴き声の騒音
- 糞による感染症
- 農作物の被害
- 在来種への影響・生態系破壊
今のところ、捕獲・駆除などの強硬策などの施策は行われていませんが、今後上記の被害に対して、被害を受ける人が増加すれば、駆除が行われる可能性もあります。
個体数が増加すると、同じ地域に暮らす生き物にも影響を与え、生態系の破壊が懸念されます。
ワカケホンセイインコ自体は、種子や果実を食べる鳥なので、捕食される生き物はありませんが、エサの奪い合い、競争に破れ個体数を減らす在来種も出てくる可能性があります。
ワカケホンセイインコに対して、行政や自治体がどのような対策を行うのかは目が離せません。
井の頭公園でワカケホンセイインコ発見※2019.03追記
2019年3月23日に、野生インコの写真家・岡本勇太さんと東京の武蔵野市と三鷹市にまたがる井の頭公園にて、野生化したワカケホンセイインコの生態を調査しました。
こちらの記事でワカケホンセイインコの食事や生活の様子をレポートしています。
TBS「爆報!THEフライデー」でワカケホンセイインコ特集(2019年8月30日)
2019年8月30日にTBSのゴールデンタイムの番組「爆報!THEフライデー」でワカケホンセイインコの特集が放送されました。
柳生博vs危険生物!第5弾
▼世田谷の高級住宅街でインコが大量発生!
▼なぜインコが大量発生したのか!?
野鳥の会・名誉会長の柳生博さんが出演し、ワカケホンセイインコの生息地を調査されました。これまでのテレビでの紹介に比べ、放送時間もとても長かったです。
なぜ、ワカケホンセイインコの日本で生息するようになったかという点もしっかり調べられ、過去の新聞記事などから野生化の理由が紹介されました。
インコを数多く飼育している掛川花鳥園に行って、専門家の意見を聞くなど、しっかり取材はされている印象は感じました。
しかし、フンによる感染症の恐れや、農作物への被害などの人間にとって都合の悪い部分がフォーカスされました。さらに、大量のワカケホンセイインコとムクドリの縄張り争いなども放送し、視聴者に恐怖心をあおる内容でした。
また、ワカケホンセイインコの日本での野生化と、元々野生のセキセイインコの群れの発生などを関連付けたりといった点で少し違和感がありました。
ただ、最後に柳生博さんが残されたコメントは素晴らしかったです。
「いずれにしろ人間が悪いんだけどね。インコの身になって考えるとか。(日本に)好きで来たわけじゃない。」
”人間のエゴで連れてこられ、ペットにさせられた動物に対して、一人一人が責任ある行動をとる。その意識を持つことが同じ過ちを繰り返さないことにつながる。”
と柳生さんの考えが紹介されました。
NHK「ダーウィンが来た!」でもワカケホンセイインコ特集(2019年9月8日)
2019年9月8日(日)の19:30よりNHK総合「ダーウィンが来た!」でも、東京で野生化するワカケホンセイインコの特集が放送されます。
第613回「東京に出没!緑のインコ軍団」(ダーウィンが来た公式HP)
今、東京の各地で目撃相次ぐインコの大群に密着。その正体は、鮮やかな緑色のワカケホンセイインコ。なぜか今、東京とその周辺で数を増やしているという。取材班は視聴者の目撃情報を頼りに都会での生活を徹底調査。すると、独自の情報交換術で効率的に食物を見つけたり、遠距離通勤で子育てしたりという超意外な暮らしが明らかに!さらに、本来の生息地スリランカも緊急取材、東京の空を舞うインコ軍団の謎に迫る。
生き物ドキュメンタリーに定評のあるダーウィンが来た!なので、どのようにワカケホンセイインコが取り上げられるか楽しみな放送です。
※(放送後追記)ダーウィンが来た!でワカケホンセイインコの特集が放送されました。放送内容は以下の記事でまとめています。
今までのテレビで報じられた形とは大きく異なり、一方的に外来種の害鳥扱いせず、ワカケホンセイインコの生態やどうして都会で暮らせるようになったかという点を中心に放送されました。
2019年2月からの長期間にわたり取材・撮影を行い、本来の生息地スリランカにも取材に足を運ぶなど、力の入った調査が行われていました。
さらに他のテレビでは取り上げられたことがない、ワカケホンセイインコの子育てなど貴重なシーンも流れました。
そうした点は評価できる一方、生態系への影響についてはそれほど言及されず、エサ台に対する注意喚起なども行われませんでした。
エサ台はワカケホンセイインコの個体数増加を担っており、巣の競合となる在来種へ影響を及ぼす可能性は高いです。
民放ではない公共放送であるNHKには、中立・バランスのある報道が求められるため、そうした点の配慮が必要だったかと感じます。
ワカケホンセイインコの専門家(研究者)にインタビュー
2020年から2021年にかけて、ワカケホンセイインコの報道は、以前よりも報じられることが多くなりました。
これまで紹介したメディア以上に、鳴き声の騒音やフン害、そして在来種への影響といった負の面を強調し、恐怖を煽る報道が行われています。
そうした現状の中、「専門家による調査に基づいた情報を伝えたい」と思い、ワカケホンセイインコを調査・研究されている千葉科学大学の阿部仁美先生にインタビューを実施しました。
テレビや雑誌では、放送時間やページ数の制約で情報が切り落とされてしまっています。
ワカケホンセイインコについてできるだけ詳しく、必要な情報を盛り込んだため、非常にボリュームのある記事になっています。
ぜひワカケホンセイインコを目撃した方や、ワカケホンセイインコ野生化について知りたい人に読んでほしいインタビュー記事です。
まとめ・終わりに
今回、ワカケホンセイインコの野生化について、その歴史やすみかとして有名だった東工大、さらにはテレビニュースでの特集が増えたことを紹介しました。
ワカケホンセイインコは、元々はインドなどに生息するインコでしたが、日本の都会での生活に順応しています。
朝日新聞記事の2015年7月に東工大で約1800羽見かけたという情報から3年が経過しましたが、恐らく個体数の増加が推測されます。
しかし、ワカケホンセイインコには罪はありません。彼らなりに、生き延びるために環境に適応したに過ぎません。
難しいとは思いますが、単純な捕獲や駆除といった選択肢ではない対策が望まれます。
インコ生活では2022年1月にワカケホンセイインコを調査・研究されている専門家の阿部仁美先生にインタビューを行っています。
こちらではワカケホンセイインコについて気になる点をリストアップし、阿部先生にお答えいただきましたので、ぜひご一読ください。
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