インコの健康診断を受ける目的とメリット・デメリット!検査項目と費用を解説

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インコの健康診断を受ける目的とメリット・デメリット!検査項目と費用を解説

インコなどの飼い鳥も人間と同じように定期的に健康診断を行うことが大切と言われています。

健康診断によって、症状として現れる前の病気を見つけ出し、早期発見・早期治療が可能になります。

今回、インコの健康診断の目的やメリット・デメリット、かかる費用についてまとめてみました。

 

飼い鳥も健康診断を行う目的

人間では1年や半年に1回の定期的なタイミングで健康診断を行います。

同様にインコなどの飼い鳥でも定期的な健康診断を推奨している獣医師は多いです。

インコの体調がおかしく病気が疑われる場合は、獣医を受診し、治療を受けましょう

インコも健康診断を受ける目的は、何か病気の兆候がないか確認することです。

インコなどの小鳥は身体が小さいため、症状が出始めて飼い主が気づいた時には手遅れだったというケースも多いです。

健康診断を定期的に行うことで、そうした病気の初期段階でも、血液検査や糞便検査で早期発見でき、治療して回復することができます。

また、複数羽飼育されている愛鳥家の場合は、先住の鳥たちに病気を移さないように、お迎え時に健康診断でなにか病気を保持していないか確認しておくことが大切です。

 

健康診断のメリット

インコの健康診断にはその他にもメリットはたくさんあります。

1つ目に健康診断のデータで、その子の体調の特徴を把握することができます。

オキナインコ・ノーマルの体重測定。日々の体重測定で通常の体重を把握し、体調不良の兆候に気づくことができる

例えば消化能力が他の個体よりも弱いだったり、肥満傾向にあるなどの個体差の情報が健康診断から得られます。

それによって、生活習慣で注意すべきポイントを獣医師からアドバイスしてもらえます。

2つ目として、定期的な健康診断のデータかかりつけ医の動物病院が蓄積していくことで、より体調変化や不調の兆しを見つけることができます。

いわゆる人間で言うところの未病という病気になりかけの状態で発見できることがあります。

健康診断のデータから病気になりそうな傾向を見つけ、病気になるまえに処置することで、個体に負担をかけることなく、体調不良を防ぐことができます。

さらに、健康診断で普段からキャリーで動物病院に通うことが習慣化できれば、万が一の病気の際にスムーズに病院に連れて行くことができるのもメリットとして挙げられます。

 

健康診断のデメリット

インコの健康診断のデメリットとしては、「健康診断自体に鳥に負担をかけること」が挙げられます。

健康診断を行うためには、普段暮らしている家から動物病院にキャリーなどで移動する必要があります。

キャリーに入ったサザナミインコのブルー(コバルト)、キャリーは持ち運びしやすいように軽いと飼い主の負担が小さい

さらに、健康診断で行う検査はふん便検査を除き、いずれも生体に負担をかけてしまいます。

そのため、健康診断を行うことでインコが弱ってしまう恐れもあります。

動物病院に通院して健康診断を受けるかは、インコの年齢や性格、季節などを考慮して判断する必要があります。

 

健康診断の診察項目

インコの健康診断では主に以下の3つの診察が獣医師によって行われます。

  1. 視診
  2. 聴診
  3. 触診

インコがチョコレートを誤って食べた場合は、動物病院で獣医の治療を受けましょう

視診では、キャリーにいるインコがどんな様子か確認します。

さらに、羽の色や形、ツヤをチェックし、クチバシの状態をチェックしていきます。

聴診では心臓の音や呼吸する肺の音などを聴きます。

触診では実際にインコに触れて、身体の様子を確認します。

筋肉量や脂肪がどれぐらい付いているか、なにか外傷はないかなどを調べていきます。

これらの診察はあくまで獣医師のこれまでの経験に基づく主観的な判断となるため、より詳細に健康診断を行うために各種検査を行います。

 

健康診断で行う検査項目

インコの健康診断では主に以下の6種類の検査が行われます。

  1. 糞便検査
  2. そのう液検査
  3. レントゲン検査
  4. 超音波検査
  5. 血液検査
  6. 病原体検査

全てを健康診断で行うわけではなく、愛鳥の体調や状態、調べたい内容に応じて検査を組み合わせます。

①糞便検査

ふん便検査は健康診断では最も基本的な検査です。

侵襲(生体を傷つける処置)に弱い鳥にとって糞便検査のような非侵襲性検査は重要です。

糞便検査では、まずは便の様子を肉眼で確認します。

  • 見た目でわかる便の異常:血便、金属中毒、分泌不全など
  • 見た目でわかる尿酸の異常:金属中毒(緑色など)OR溶血、クラミジア感染症

よく観察した後は顕微鏡で観察します。

顕微鏡では寄生虫、細菌、真菌、消化(デンプン・脂肪の様子)について確認します。

実は多尿と下痢を区別。多尿は泌尿器の異常であり、下痢は消化器の異常だったりします。

下痢として来院した鳥のほとんどが多尿のケースであることが多いです。水分が多くても便の形が崩れていなければ、下痢ではありません。

②そのう検査

そのう検査は、獣医師が飼い鳥を診ることができるかのバロメーターとなる検査です。

「そのう検査ができる=鳥を診れる?」

検査によりそのうを損傷する危険性もあるため、検査には注意が必要です。

ゾンデというチューブを使ってそのうを検査します。

病気の原因となる以下のような寄生虫や細菌・真菌が存在していないか、確認します。

  • 寄生虫:トリコモナス
  • 細菌:らせん菌
  • 真菌:カンジダ、菌糸

③レントゲン検査

レントゲン検査はリスクは比較的少なく、リターンの多い検査です。

気嚢領域が大きいため、内臓の輪郭が明瞭にレントゲン写真に写ります。

ただし、レントゲン検査もノーリスクではなく、骨折や死亡の可能性もあります。

そのため、体調不良なで弱っているインコのような、状態の悪い鳥では実施しません。

とりわけ、呼吸の悪い子は要注意です。

④超音波検査

超音波検査ではエコーによる検査を行います。

インコなどの小型鳥では有効性の範囲が狭い、液貯瑠などを調べます。腹水か嚢胞か判別できます。

また、前述のレントゲン検査で写らない卵を見つける役割もあります。(薄い殻の卵はレントゲンで写りにくいため)

⑤血液検査

血液検査は、インコから血液を採取する必要があるため、他の検査に比べるとリスクが高い検査です。

ただ、血液の情報から、インコの体調について色々なことを把握することができます。

血液検査では大きく全血球検査、生化学検査の2種類に分類されます。

とりわけ飼い鳥の血球は壊れやすいので取り扱いに注意です。

採血部位は頸静脈か、足爪の2パターンがあります。

頸静脈のデメリット

  • 100%の安全を保障できない(鳥に針を刺すと死んでしまうは迷信)
  • 保定のリスク
  • 出血が止まらないリスク(血が止まらない病気を持っている場合)
  • 血圧低下によるリスク

頸静脈のメリット

  • 超小型鳥でも可能(少ない血液量でOK)
  • 検査結果にアーティファクト(歪み)が生じない
  • すばやく採血できる(爪切りと比較して)
  • 疼痛が少ない

頚静脈からの採血では検査結果に歪みが生じにくく、正しい状態を検査できます。

ただ、頚静脈による採血の注意点としては、出血による血種や失血死が起きうること、心肺への不安が挙げられます。

爪切りのデメリット

  • アーティファクトが生じる
  • 保定時間がながくなる
  • 血液が少量しか取れないことが多い
  • 疼痛が伴う

爪切りのメリット

  • 出血による死亡事故は皆無

死亡事故などのリスクはありませんが、爪切りによる採血は検査結果に歪みが生じることがあり、検査としてはデメリットが大きいです。

⑥病原体検査

病原体検査は、遺伝子検査を行うことが一般的です。

検査材料に含まれる遺伝子を検出するが、検出感度、特異性ともにに高く、優秀な検査です。

  • メリット:死滅した病原体も検出できる(デメリットになることも)
  • デメリット:遺伝子変異した病原体は検知できなくなる

病原体検査においては検査センターの選択が大切です。

なぜならば、検査機関によって、検査条件が異なり、病原体の種類、感度、特異性に違いが出るためです。

現状では、国際的に共通した検査法は定められていないため、各動物病院が信頼できる検査機関を利用しています。

ほとんどの鳥の病院は、CBL(Companion Bird Laboratories)を使っています。

※CBLは小鳥の病院BIRD HOUSE(眞田 靖幸獣医師)の検査部門です。

鳥の病気によって、検査材料の違いが生じます。

病原体検査で受けるべき検査はクラミジア感染症で、受けた方がよい理由は人獣共通感染症のため、人に感染する恐れがあるからです。

必要な検査を取捨選択

ここまで6種類の検査を紹介してきましたが、全ての検査を毎回行う必要はありません。

獣医師と相談しながら、愛鳥のステージに応じた必要な検査を行うようにしましょう。

 

健康診断でかかる費用

インコの健康診断でかかる費用としては、以下が挙げられます。

  1. 初診料(初回の場合のみ)
  2. 各種検査費用
  3. 診察費用

初診料は動物病院によって異なりますが500~2000円程度のケースが多いです。

検査費用ですが、検査内容によって大きく金額が異なり、ふん便検査だと1000円以内で実施できますが、以降の検査の場合は徐々に検査費用が高くなります。

病原体検査は、調査する病気によっても費用が変わり、色々な病気について調査すると、1万円以上かかるケースもあります。

診察費用については動物病院ごとによって料金は異なりますが、高額な検査ほどではありません。

そのため、ふん便検査や診察による簡単な健康診断であれば1万円以内に収まり、遺伝子検査や血液検査などの詳細な検査を行うと1万円以上かかることがあります。

 

まとめ・終わりに

今回、インコの健康診断について受ける目的やメリット、検査項目や費用について紹介しました。

健康診断によって普段のインコの状態を把握し、飼う上で注意すべきポイントを知ることができます。

また、健康診断を定期的に行うことでデータが蓄積され、病気などの体調不良の兆候に気づきやすくなります。

健康診断で行う検査項目は色々な項目がありますが、インコの負担が少ない糞便検査はオススメです。

その他の検査も獣医師と相談しながら、どの検査を行うか決めて、愛鳥の健康状態を把握し、健康診断を行いましょう。

※本記事は、愛鳥祭2019のセミナー「健康診断へ行こう!検査は何をやるの?(西英・バーズ動物病院院長)」の講演内容を参考としています

愛鳥祭2019セミナー「健康診断へ行こう!検査は何をやるの?」講演メモ(バーズ動物病院・西谷英氏)